前回の記事で、IT畑出身の方が医療情報技師や病院内システムエンジニアとして情報システム部門(情シス)に勤務する場合、医療事務を命ぜられることがあるとお話しました。
医療事務の主な仕事内容
- 患者の受付、窓口応対
- 外来/入院患者の請求書作成
- 診療報酬(レセプト)請求
- 医師への診断書作成依頼・代行作成
1.患者の受付、窓口応対
2.外来/入院患者の請求書作成、3.診療報酬(レセプト)請求
4.医師への診断書作成依頼・代行作成
病院内システムエンジニアに医療事務の知識が欠かせない理由
では、システム管理部門である病院内システムエンジニアにとって、なぜ医療事務の知識が求められるのでしょうか?
診療報酬抜きに病院の経営は考えられない
まず前提として、病院が患者に請求する費用は、(自由診療の場合を除き)診療報酬制度に則って算出されます。好き勝手に請求してよいわけではありません。
自由診療というのは診療報酬制度以外の範疇で行う医療行為で、基本的には全額自己負担(つまり10割負担)となります。一部の先進医療や美容形成などがこれに当たります。
詳しくは別記事に書きましたので、ご参考に。
一般的に病院は診療報酬制度に則って医療行為を行います。ですので経営陣はこの診療報酬制度の動向に常に目を光らせています。従来請求できていた医療行為に要件が追加されたり、新たに請求できる項目が増えたりするので、「今後うちの病院で採算がとれるか」を考えるのです。
現場にも大いに関係する
「経営のことは上層部が考えることだから現場職員には関係ないよね」と思うかもしれません。しかし、現場仕事の看護師であっても役職クラスは診療報酬を念頭に置いて仕事しています。なぜなら、費用を算出する上で現場に求められる要件があるからです。
例えば「入院して○日以内に、規定の書類を作成しなければならない」「○○の資格を有する者が従事しなければならない」といった具合です。
例えば2020年4月の診療報酬改定では、超音波検査を実施する際には「検査画像を診療録に添付すること」という要件が追加されました。そうなると現場ではその手間を減らしたいはずですから、「検査したら自動で画像が電子カルテに貼り付けられるようにしたい」といった要望が上がることが予想されます。ここに、病院内システムエンジニアの仕事が関係してくるわけです。
知識を知らないと話が進まない
実際に現場から寄せられる意見としては、例えば「各病棟の看護必要度の割合について統計資料を出してほしい」などがあります。看護必要度という言葉を知らないと話が進みませんね。入院料などの算定に係る要件で、医療事務を勉強していると理解できます。ITの知識だけでは現場職員との会話に入れず、相手にされなくなってしまいます。
院内SEは現場と開発ベンダーとの橋渡し役なので、双方の知識が必要になってくるのです。ITスキルだけでは力不足となる所以がここにあります。
診療報酬はどの医療従事者にも関係する制度なので、中身をまるで知らないと仕事に支障が出ます。全く別ジャンルの知識が必要という点で、院内SEは社内SEとは性質の異なる職業と言えます。
以上、医療事務の仕事内容と病院内システムエンジニアとの関係についてお話しました。参考になれば幸いです。
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