病院の情シスで働く医療情報技師の奮闘記

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初診のオンライン診療が恒久化? 基本事項をおさらい

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こんにちは。当ブログをご覧いただき、ありがとうございます。

 

医療従事者であればご承知のはずですが、政府がオンライン診療の恒久化を本格的に検討し始めるようです。

 

www.itmedia.co.jp

 

 

オンライン診療は、スマホやPCなどを使って遠隔地から受診できる制度。従来から一定の条件下で認められていましたが、新型コロナウイルス対策として時限的に初診からの利用が解禁され、いつまで容認するのか議論されていたところです。

 

従来から認められていたにもかかわらずあまり広まっていないのは、①診療報酬の点数が低い、②設備投資がかかる、③患者にとっても利用しづらい、などの理由があるでしょう。日本医師会は初診の恒久化に慎重な姿勢を見せており、いち医療従事者の私としても安全な医療に支障がないのか疑問がありますが、その是非は別問題として、オンライン診療についてもう一度基本的な事項をおさらいしておきたいと思います。

 

 

原則、初診は対面が条件

現行の診療報酬制度では、オンライン診療料(オンライン診療を行うことで病院が得られる利益)が算定できるのは「継続的に対面診療を行っている患者」のみです。それも、事前に診療計画を作成し、その計画に則ってオンライン診療を行うという条件で認められています。

  

医療従事者でない方のために説明しておきますと、病院がパソコンやタブレットを使ってオンラインで診察を行う場合、要件を満たさなければ病院の報酬として認められない決まりになっています。

その要件の一つ(ほかにもあるのですがメインなもの)が下記になります。

 

A003 オンライン診療料(月1回)

 

1 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、継続的に対面による診察を行っている患者であって、別に厚生労働大臣が定めるものに対して、情報通信機器を用いた診察を行った場合に、患者1人につき月1回に限り算定する。ただし、連続する3月は算定できない。

 

(医科診療報酬点数表より引用)

 

つまり「対面診療が難しい場合の補助的な役割」という位置付けになっており、患者には病院へ来てもらい初診を対面でしっかり行った上で、事前に診療計画を作成し、その計画に則って行わなければならないという決まりがありました。

 

診療報酬制度における評価は低め

さらに、オンライン診療料の点数は対面の診療よりも低く設定されています。病院の収入は診療報酬制度に基づいているので、この制度における評価が低い医療行為は収益性に乏しくなり、病院経営を苦しめることになりますから、点数が低いと二の足を踏む病院は多いのです。

 

しかも3ヶ月連続では算定できませんので、例えば1月、2月とオンライン診療を行ったら、次に算定できるのは4月となります。

 

▼診療報酬ってなに?という方はこちらの記事をチェック!

whitefox21.hatenablog.com

 

これでは、オンライン診療を行う上でハードルが高いと言わざるを得ません。例えば「風邪が治らないからとりあえず薬を出してほしい」とか「遠くてなかなか通院できないから毎月薬だけ出して欲しい」といったニーズについては、オンライン診療だけでは対応できないのです。

 

現行の要件は、実際のニーズにそぐわないと思われます。へき地への医療に対応することが主たる目的なのかもしれませんが、オンラインで手早く済ませたい、というのが多数の意見ではないでしょうか。

 

これでは、国はオンライン診療に後ろ向きだと言われても仕方がありませんね。

 

コロナ禍で要件が緩和

ところがコロナ禍が始まると、厚生労働省は「慢性疾患を持つ患者に処方するなら、電話やオンライン診療での診察も可とし、処方箋も調剤薬局へのFAXで良い」「事前の計画なしでも認める」といった、従来の要件を緩和する特例措置を設けました。基礎疾患のある患者は感染しやすいとされていたため、病院に来る機会を極力減らすためです。

 

新型コロナウイルスの拡大防止措置

新型コロナウイルスの感染拡大を防止する観点から、慢性疾患等を有する定期受診患者等について、当該慢性疾患等に対する医薬品が必要な場合、感染源と接する機会を少なくするため、一般的に、長期投与によって、なるべく受診間隔を空けるように努めることが原則であるが、既に診断されている慢性疾患等に対して医薬品が必要になった場合には、電話や情報通信機器を用いて診察した医師は、これまでも当該患者に対して処方されていた慢性疾患治療薬を処方の上、処方箋情報を、ファクシミリ等により、患者が希望する薬局に送付し、薬局はその処方箋情報に基づき調剤する。

 

新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その2)

https://www.mhlw.go.jp/content/000602230.pdf

 

患者が病院に行くことによって新型コロナウイルスに罹患するリスクを避けるために、医師が電話やオンラインで診療し処方することを認める、ということです。糖尿病など慢性疾患のある患者が新型コロナウイルスにかかると重症化するケースが多く見られることから、こうした措置を認めた格好です。


つまり患者は病院へ行くことなく薬を受け取ることが出来る、ということになります。

 

事前の診療計画なしでも可能に

新型コロナウイルスの感染拡大を防止する観点から、電話や情報通信機器を用いた診療で処方する場合、慢性疾患等を有する定期受診患者等について、当該患者が複数回以上受診しているかかりつけ医等が、その利便性や有効性が危険性等を上回ると判断した場合において、これまでも当該患者に対して処方されていた慢性疾患治療薬を電話や情報通信機器を用いた診療で処方することは、事前に診療計画が作成されていない場合であっても差し支えないこととする。

 

(同上)

 

上に書いたとおり、オンライン診療料を算定するにはいくつか条件があり、特に「事前の診療計画が必要」というネックがありました。今回の措置ではここが免除されることになります。

 

平たく言うと、「定期的に受診している慢性疾患のある患者に対していつもの薬を出すだけなら、対面診療をせずに、診療から処方箋の発行までオンラインで完結させても診療報酬として認めるよ」ということになります。

 

初診からのオンライン診療を時限的に解禁 

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらないことから、政府はさらなる緩和として、初診からのオンライン診療を時限的に解禁しました。これは大きな緩和措置でした。なぜなら、初診ということはその患者に対する情報がゼロの状態で診察しなければならず、安全な医療にも影響しかねないからです。

 

対面を重視するのは確かな医療を提供するため

言うまでもないことですが、画面越しでは得られる情報に限界があります。触診や聴診ができず、確かな医療に支障をきたす恐れがありますので、医師会が慎重になっているわけです。

 

患者の立場からすれば「ちょっと診てくれるだけでいいのに」「不安を取り除いてほしいだけなのに」と思ったりもするでしょうが、診察には責任が伴いますから安易な診断は下せません。

また事務的な側面では、健康保険証の確認や支払いなども間違いのないよう行う必要があります。特に初診の場合、保険証を入力するのに記号・番号が必要ですが、画面越しに伝えるとなるとやや難があるように思えます。

 

コロナを鑑みた時限的な措置だからこそ認められていた初診が恒久化されるとなれば、当然ながら相応の医療体制を整えなければなりません。オンライン診療で誤診を防ぐためにどうするか、という議論が本格的になされていくことになります。

 

オンライン診療を始めるには

オンライン診療を始めたい、あるいは検討をしたい、となったらまずは厚生労働省から出ているガイドラインをチェックしましょう。オンライン診療と言っても、好き勝手にシステムを構築してよいわけではなく、要件や運用のあり方が国から示されていますので、それを参考に導入を進める必要があります。

 

これについてはこちらの記事で取り上げていますので、ご覧ください。

whitefox21.hatenablog.com

 

恒久化が法令化するまでは、あくまで現行の特例措置下のもと動かなければなりません。現状、オンライン診療を行ったら毎月厚労省へ報告することになっています。こうした注意点についても下記記事でまとめていますので、併せてご覧ください。

whitefox21.hatenablog.com

 

以上、初診からのオンライン診療が恒久化される可能性を踏まえ、基本的事項をまとめました。

 

個人的には、オンライン診療が本格普及する決定打は診療報酬の点数が上がることだと考えますが、もしそうでなくても恒久化が実現されることで、そのぶん要件も緩和され導入の敷居が下がると思います。

当然システム面の設備投資も必要ですので費用とのにらめっこになりますが、LINEがオンライン診療プラットフォームを提供するなど、早くも呼応した動きが出てきていますので政府の動向に目が離せませんね。

 

whitefox21.hatenablog.com

 

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