病院のSEとして10年以上働いている白狐(しろぎつね)です。
この記事では、院内SEの仕事は楽なのかきついのか? という話をします。
結論から言うと、他のSEに比べれば「人付き合いが苦でない人には楽」と私は考えます。その根拠について現役院内SEの立場から説明していきますので、関心のある方はぜひお付き合いください!
目次
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院内SEが他のSEに比べて楽である理由
まず、院内SEが他のSEに比べて楽である理由は次のとおりです。
理由1 高度で最新の技術は求められないから
院内SEの役割は、病院で稼働するシステムを安定稼働させること。医療スタッフにシステムの使い方を説明したり、問い合わせに応対したり、トラブルを解決したりするのが仕事です。顧客にシステムを納めるSEとは違い、開発を行うわけではありませんので、高度で最新の技術はあまり求められません。院内のシステムについて精通していればよいので、ある程度IT業界のトレンドは追っておく必要はありますが、顧客に提案したりコードを書いたりする仕事ではないため、実践する機会がそれほどありません。
20代の頃はいろんな技術を勉強しようと躍起になるでしょうが、30代以降ともなれば常にトレンドを追いかける余力が時間的・体力的にきつくなってくると思います。その意味で、院内SEは楽だということが言えます。
▼余談ですが、20代は人生での大きな決断をするのに最も適した年代と言えます。30歳を過ぎると、そろそろ身を固めていこうと考えます。やり直しのきく20代だからこそ、あとあと後悔しないためにいろんなことに挑戦したほうがよい、ということをこちらの記事にまとめました。
理由2 納期や顧客に振り回されることがないから
システムを開発するわけでなく(一部の大病院を除く)、納めるわけでもないため、納期や顧客に振り回されることがありません。私も以前はSEの端くれで、プロジェクトをスケジュール通りに進めるために残業や休日出勤をして間に合わせていたときがありましたが、そのようなことが発生しません。
SEをやっていると、他チームで人が辞めたから代わりにヘルプで行くとか、顧客の都合で仕様変更がかかったから途中で計画を変更するとか、そうしたことで仕事の予定が変わることはよくあります。そうしたことで振り回されることがないのも、院内SEの楽な一面です。
理由3 システム障害がなければ残業がないから
院内SEは、システム障害がなければ残業せずに帰ることが多いです。システムの規模が大きい場合は障害も起きやすいため、残業して対応したり、最悪の場合は夜中や休日に呼ばれたりすることがありますが、それは稀で、ほとんどは定時で上がることができます。
障害が少ないなら院内SE要らなくね?
と疑問を持つかもしれませんが、そうはいかないんですね。システム障害のほかにも、医療スタッフへ操作方法を説明したり、操作ミスをしたときの修復作業をしたりなど、細かな応対があります。日中はそうした問い合わせへの対応がほとんど。システム障害のような緊急事態であれば夜中でも駆け付けますが、そうでなければ翌日まで待ってもらいます。
▼院内SEの詳しい仕事内容について、こちらの記事にまとめました。就職や転職を考えている方は、ぜひ参考にしてください!
以上の理由が、院内SEが楽だと言える根拠です。対コンピュータのスキルはSEほど求められない、ということが伝わるかと思います。
院内SEには人付き合いが大事な理由
いっぽうで、人付き合いが嫌な人にとってはかなりの苦痛となる可能性があります。むしろ、院内SEの本分は対人スキル、と言えるほど人付き合いが重要です。その理由を説明します。
理由1 現場スタッフとの対話が必須だから
前述したとおり、院内SEは医療スタッフとの対話を避けて通れません。詳しい使い方を教えたり、どんなトラブルが起きているのか聞き出したり、新たなシステムを導入するのに要望をヒアリングしたりなど、人と関わることの多い仕事です。
SEと名の付く職業なのでデスクワークのイメージを持つかもしれませんが、一日中パソコンに向かっているなんてことは少なく、むしろ診察室や病棟で作業するフィールドワークの方が多いです。天井裏や床下にLANケーブルを這わしたり、パソコンや情報機器を運搬・設置したりといった肉体労働もあります。
SEとは言っても、仕様書を書いたりコードを書いたりすることはほとんどありません。人と接するのが嫌な人、デスクワークだけをやりたい人にとっては苦痛と言えるでしょう。
▼よく院内SEの求人に載っている「コミュニケーション力」とは具体的に何なのか、について私なりの応えを出してみました。こちらもぜひ参考にしてみてください!
理由2 話の通じない人ともレベルを合わせて話さなければならないから
院内SEとして多い仕事の一つが、システムの操作指導です。医師や看護師をはじめさまざまな医療スタッフに対し、システムの使い方を丁寧に教えなくてはなりません。操作に迷ったり行き詰まったりしたときは逐一現場へ呼ばれ、問題を解決します。
相手はパソコンの素人なので、専門用語が通じません。その人のレベルに合わせた説明の仕方をしなければならず、何度も同じことを教えたり、ググれば分かるようなことを聞いてきたりします。相手に理解してもらえるまで、丁寧に、分かりやすく教えます。
この仕事を始めた頃は「この程度のトラブルでいちいち呼ぶな!」と思うことも多々ありましたが、今ではすっかりそれもなくなりました。考えてみれば、医師や看護師は治療内容を患者に説明するとき、医療用語を極力省いて、相手に分かる言葉を選んで説明します。自分にとって知っていて当然の知識が、他者にとっては当然でない、という当たり前のことに気づいたとき、些細な事でイライラすることはなくなりましたね。
それでも、相手のレベルに合わせた説明をしなければならないことにストレスを感じる人にとっては、苦痛でしかないと思います。
▼一般企業に比べると、病院はブラックな職場だと思われがちです。ただでさえあまり世話になりたくない場所ですし、陰湿で閉鎖的・・・そんなイメージを持たれやすいのですが、実際はどうなのかを現役目線から語りました。
理由3 駆け引きや交渉が求められることがあるから
院内SEには、時として職員との「駆け引き」や「交渉」が求められることがあります。
我々はシステムの運用方法を管理する立場なので、院内のさまざまな部署に対して「これはおたくの部署でやってね」と仕事を振る立場にあります。システムを安定稼働させるためには、誰がどの領域を責任持って管理するかを定めなければならず、管理が行き届いていない分野があったり、新たに割り振る仕事が出来たら旗振り役を務めたりしなければならないわけです。
例えば、他の病院から届いた紹介状や情報提供書をどの部署でスキャンし、電子化するか。システムの動作を決める「マスタ」の設定作業を誰が行うか。それぞれの部署の「持ち場」を決め、持ち場での出来事については責任を持ってその部署で完遂させなければなりません。
誰もやりたがらない仕事を誰かに振らなければならないときには、「駆け引き」や「交渉」によって引き受けてくれる人を探します。これがなかなか、人間の総合力が問われるというか、コミュニケーション能力が求められるスキル。当然、誰しも仕事を増やされたくないので正攻法では拒否されますし、最悪の場合「システム管理はあんたの仕事だろ」などとブーメランを喰らい、割り振るはずが自分に返ってくることもあります。
そこで、相談しやすい良好な関係の人間を各部署に一人くらいは作っておくとか、貸しを作って借りを返させるとか、発言権を持つ人から伝達してもらえるような体制を作っておくとか、そうしたコネクションを日頃から作っておくのが大事になります。「仕方ない、それならうちで引き受けるか」という言葉を引き出す能力が必要になるわけです。
こうして言葉で書くのは容易いことですが、実践するのは至難の業。ましてやパソコンが仕事相手のSEにとって、友好的な人間関係を広く構築していくのは不慣れでストレスフルだと思います。車を売る営業マンのように、相手が条件を呑まざるを得ない環境に追い込む、今回は頼みを聞いてもらえなかったが次回は呑んでもらう約束をする、などといったスキルも問われます。
よく、院内SEの求人には「コミュニケーションスキル」が挙げられていますが、一つはこのようなスキルだと考えて構わないでしょう。
院内SEの仕事相手は、患者ではなく職員です。職員といかにうまく付き合い、システムを安定して運用させられるかは院内SEの腕に掛かっている、と言うことができます。
▼コミュニケーション力を上げるために参考になる本を3冊、こちらの記事で紹介しています。コミュ力ってどう上げればいいんだ・・・そう悩んでいる方は、参考にしてみてください!
人付き合いを攻略できれば、院内SEの仕事は楽!
以上、院内SEの仕事は「人付き合いが苦でない人には楽」だというお話をしました。
上で紹介した記事にも書いたのですが、病院で仕事する上で大切な要素の一つが「寄り添う心」です。医療の現場は、損得勘定抜きに善意や献身的な行動で行われていることが多いため、人の気持ちを無視するような、行き過ぎた合理主義は歓迎されません。特に営利企業のような「儲かるか、儲からないか」の発想だけではうまく物事を進められない環境です。
採算取れない患者は診察しても儲からないから受診を断ろう、なんて思われたら困るよね。
相手の気持ちを慮る、周囲の状況をよく観察した上で言動を取る、といった人情を大切にする行動ができる人にとっては、院内SEの仕事は楽ではないでしょうか。
偉そうなことを書いていますが、私も現場スタッフにお叱りを受けながら学ぶ、勉強の日々です・・・
ところで、「すべての悩みは人間関係である」というアドラーの格言を聞いたことがあるでしょうか。オーストリアの心理学者で、自己啓発本のベストセラー「嫌われる勇気」の題材となった人物です。
この記事では「人付き合いがうまくできれば院内SEは楽だ」と言いましたが、実はこの仕事に限らず、人が抱えるあらゆる悩みは人間関係に通じている、というのがアドラーの主張。どんな仕事においても人間関係をいかに攻略するか、が肝心なのかもしれません。
職場で友好的な人間関係を作ることができれば、仕事を依頼しやすかったり、困りごとを相談しやすかったりと良いことづくめ。自分なりに働きやすい環境を意識的に作っていくことも、仕事のひとつと言えるのではないでしょうか。
院内SEの仕事が楽かそうでないか、の最終的な答えは、この記事を読んだ読者に決めていただきたいと思います。
最後に
当ブログでは、病院に勤務するシステムエンジニアの私が、関係法令の改正やパソコンのトラブルシューティングなどをSE目線から紹介しています。
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