こんにちは。当ブログをご覧いただき、ありがとうございます。
管理人の白狐(しろぎつね)です。
病院内SE にとって2021年のメインイベントと言っても過言ではない、マイナンバーカードを使ったオンライン資格確認(保険証の確認)が今年3月から始まります。
コロナ禍により予算の計画変更を余儀なくされた医療機関も多数あることと思いますが、政府主導でデジタル改革を進めている情勢ですので、何らかの方針を決めなくてはならないでしょう。
マイナンバーカードを読み取る顔認証付きカードリーダーは、令和3年3月までに申し込むことで一定台数が無償配布されることとなっており、厚労省の特設サイトではその申込状況が公表されています。これを見てみると申込数が意外と低く、導入の延期を考えていたり、導入そのものに反対したりしている医療機関も一定数いるかもしれません。
そこで本記事では、オンライン資格確認を導入することにどんなデメリットがあるのかを考えてみます。
▼なお、令和3年(2021年)3月の期限直前特集として、下記記事にてオンライン資格確認についてまとめています。興味があれば併せてご覧ください。
目次
本記事執筆時点のカードリーダー申込状況
顔認証付きカードリーダーの申込状況は、下記ページの最下部で確認することができます。
本記事執筆時点での病院の申込率は27.7%。カードリーダーの申込窓口となるポータルサイトのアカウント登録数も50.3%と低調です。カードリーダーの申込みすらまだ検討していない病院が半数ということになります。
都道府県別で見てみると、北海道の病院の申込率は24.5%。ポータルサイトに登録して情報収集はしているものの、導入には着手できていないところが多いのですね。
▼オンライン資格確認ってなに?という方は、まずこちらの記事をご覧ください。
切実な話、オンライン資格確認の運用には費用がかかります。顔認証付きカードリーダーは無償配布されますが、オンライン資格確認を行うためのインターネット回線敷設、維持費、カードリーダーとつなぐPC端末、医事システムの改修など発生するコストは目白押しです。
導入にかかる費用は補助金である程度賄えますが、毎月かかる維持費は病院持ちになります。病院の現状は予算的にも時間的にもコロナ対応が再優先課題ですから、後回しになってしまうのは仕方ないと言えます。
いっぽう、公的医療機関におけるカードリーダーの申込率は高い水準です。都道府県立は86.7%、市町村立でも73.1%となっています。菅内閣に移行してからというもの、脱はんこや自治体の基幹システム標準化などデジタル改革を今までにないスピード感で推し進めていますので、公的医療機関においてはこれに合わせて進めていると思われます。
導入におけるデメリットはなにか
申込が少ない理由としては、「デメリット>メリット」であると判断されているに他なりません。ではどんなデメリットがあるのか、具体例を考えていきます。
オンライン資格確認用のインターネット回線に係る維持費
レセプト請求に使用している回線と共用もできますが、都合が悪い場合は新たにオンライン資格確認用にインターネット回線を敷設する必要があります。新設に係る費用は導入費として補助金で賄えますが、月額料金に関しては自腹となります。
敷設した以上は、オンライン資格確認を実施するか否かに関わらず固定費として発生していくわけですから、費用対効果を考えなくてはなりません。
顔認証付きカードリーダーの保守費
オンライン資格確認のポータルサイトでは、顔認証付きカードリーダーを提供する3社(富士通、パナソニック、アルメックス)のサポート体制が公表されています。どのメーカーも無償保証期間を設定しており、これを過ぎると有償対応となります。
一度オンライン資格を導入したら基本的に後戻りはできないでしょうから、無償保証期間を過ぎたらいくらかかるのか?が読めず、踏み切れていない可能性があります。
www.iryohokenjyoho-portalsite.jp
余談ですが、注意したいのがカードリーダーの修理方法です。3社とも「センドバック」方式を採っています。センドバックとは、故障品を送って新品と交換する修理方法のこと。つまり保守業者が来院して直すのではなく、病院の職員がカードリーダーを取り外して郵送するといった作業を行うことになります。予備品がなければオンライン資格確認を行えない空白期間が発生することを意味します。
現場(医事課)での混乱
マイナンバーカードを使って確認できる保険証は、健康保険被保険者証(社保)、国民健康保険被保険者証(国保)、後期高齢者医療被保険者証(後期高齢)などの主保険のみです。重度心身障害者や子ども医療費といった公費負担については認証できないのです。
何が問題になるかと言うと、医事課での保険確認作業です。カードリーダーで主保険を確認したあと、公費については今まで通り目視で確認しなければならなくなります。今までは医事端末でいっぺんに確認していたところが別になりますので、現場の職員が混乱して確認漏れや間違いにつながる恐れがあります。オンライン資格確認に懐疑的な方は、この点を気にされているかもしれません。
※アルメックス社のカードリーダーはOCR機能を使って紙の公費保険証を読み取れるようですが、どこまで医事システムと連携できるかが未知数のため、ここでは触れないでおきます。
補助額が実費の1/2→実費(上限あり)に変更されている
余談ですが、当初このオンライン資格確認に係る補助金の額は、カードリーダー1台導入の場合だと210.1万円を限度に最大1/2を補助だったのが、210.1万円を限度に全額(実費)補助に変更されています。厚労省のホームページにある「追加的な導入支援策」というものがそれに当たります。
▼医療機関等向けポータルサイトのトップページ(本記事執筆時点)
となると、導入にかかった費用の全額をこの補助額内に収められれば、実質負担はゼロということになります(もちろん、上記に挙げた月額費用は別途かかります)。補助額を引き上げたことからも、政府の鼻息の荒さを感じずにはいられませんね。
以上、オンライン資格確認を導入するうえで考えられるデメリットを考えてみました。
少し前のデータですが、総務省のホームページで公表されているマイナンバーカードの取得率(人口に対する交付枚数率)は、令和2年3月1日時点で15.5%と低調です。自動車の運転免許証と合体させる案が浮上しており、これから取得率がどれだけ上がるのかが注目されますが、将来のコストや費用対効果を見極められないなかで導入するのは拙速、と考える医療機関が多いのかもしれません。
顔認証付きカードリーダーが無償配布される要件は、令和3年3月までに申し込むこととされていますから、オンライン資格確認のポータルサイトにて新たな情報が出ていないか定期的にチェックし、動向に注視することをオススメします。
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