政府が初診からのオンライン診療を解禁したことを受け、厚生労働省から正式な事務連絡が4月10日に通達されました。保険証の確認方法やなりすまし防止策のほか、オンライン診療の実施状況について厚労省へ報告すること、担当医の研修受講要件を緩和することなどが盛り込まれていますので、検討している医療機関は必読です。
本記事では、医療情報技師としての視点から事務連絡の内容を見ていきます。
閣議決定時の記事はこちらをご覧ください。なお本事務連絡は、下記記事を書いたこの日に出されていたようです。
オンライン診療にあたっての注意点をこちらにまとめましたので、併せてご参考下さい。
初診解禁は期限付きの時限措置
まず今回の解禁はあくまで期限付きの時限措置であり、新型コロナウイルスの感染状況や本解禁による実効性を3ヶ月ごとに確認し、検証することとされています。今後の事務連絡で期限が設定されることがありますので要注意ですね。
本来のオンライン診療は「対面診療が難しい場合の補助手段」としての位置付けであるため、事前に治療計画を作成しなければならないなど要件が厳し目に作られています。おそらく時限措置が終了したら従前の要件に戻るでしょうから、ここで一気に設備投資してしまうのは早計と思われます。従前の要件が足かせになり、オンライン診療に踏み切れない医療機関も多いはずです。
オンライン診療の算定要件についてはこちらの記事をご覧ください。
オンライン診療を行った場合は所定の書式で厚労省へ報告
オンライン診療を行ったり、受診を勧奨したりする場合には、上記資料に添付されている書式にて病院所在地の都道府県に毎月報告し、都道府県から厚労省へ報告することとされています。
上記の厚労省のオンライン診療ページで「対応医療機関リスト」という欄が設けられていることから、報告のあった医療機関はここに掲げられるものと思われます。
なおこのページでは、オンライン診療を行う医療機関向けに掲示用ポスターがダウンロードできるようになっています。
できる限り地域医療情報連携ネットワークなどで情報収集を
問診と視診のみでしか情報を得られないため、地域医療情報連携ネットワークなどを用いて患者の情報を集めることとされています。医師会が解禁を反対していた理由の一つがここでした。
当院では数年前にこの地域医療情報連携ネットワークに参加し、紹介元患者の情報をオンラインで入手するようになりました。地域連携課の職員がFAXをもらい医師に渡しに行ったり、不鮮明で読めない場合に送り直してもらったり、といった手間がなくなり現場の反応は上々です。また医師としても資料の到着を待つことなく、電子カルテから患者の情報を必要なときに即座に入手できると好評です。
しかし地域医療情報連携ネットワークの導入にあたり、大きなハードルとなるのが同意書の取得です。患者に無断で他医療機関へ情報提供するわけにはいきませんので、事前に患者から明示的に(つまりきちんと伝わるように)同意を得なければなりません。「明示的」というのがミソで、この種の話はさらっと説明しても何となくしか患者に伝わらず、あとで「そんな話は聞いていない」とトラブルになることがあるのです。いつ、どのタイミングで、どの部署で説明し、同意書に記入してもらうかを決める必要があります。
これに合わせてか、厚労省は同意取得の方法について3月31日に見解を出しました。こちらも併せて一読すべきと思います。www.mhlw.go.jp
通信環境の整備が肝心
病院内SEとしてしっかり確認したいのは、快適な通信環境の整備ですね。先日試しにタブレットを用いて院外とビデオ通話してみたところ、音声がしょっちゅう途切れて聞こえづらい、画質が荒く患部を見るに耐えない、といった問題が判明しました。視診が頼りになるオンライン診療では画質は妥協できません。
実際使ってみると「対話開始までのステップが長く、待たされる」「アプリの操作に戸惑うばかりで問診が進まない」といった課題も出ましたので、いくつかアプリを使ってみて操作性や利便性をしっかり検討したいものです。症状で辛い思いをしている患者にとっては早く診てもらいたいのに、余計なところに時間を取られ苛立つといったことも十分あり得ると感じました。
病院側が通信回線の契約をグレードアップしても、患者方の回線が弱いと十分な通話品質が得られません。いざオンライン診療を始めたらこうした問題が次々出てくるでしょうから、SEとしてはあらゆる問題を想定し、代替案を考えておかなければなりませんね。
厚労省から事務連絡が出されたことで、ひっ迫している病院では導入に向け本格始動することと思います。日々変わる厚労省のページを随時確認しながら、オンライン診療の環境整備に取り組んでいきましょう。
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