こんにちは。当ブログをご覧いただき、ありがとうございます。
管理人の白狐(しろぎつね)です。
皆さんは、病院に勤務するシステムエンジニア(病院内SE)という職種をご存知でしょうか?
会社内のシステム管理を担う社内SEがいるのと同様に、実は病院にも常駐のSEがいます。システムベンダーの社員が出向して常駐するケースもありますが、私のように病院の職員としてSEの業務を行う職種があります。
病院内SEの存在はニッチであり、求人数も多くないためあまり知られていませんが、病院の診療を縁の下で支える重要な業務であり、システムエンジニアがそのスキルを活かせる仕事でもあります。
病院に勤務するシステムエンジニアは、仕事柄医療現場の知識が求められますので、医療系とIT系双方の知識を兼ね備える必要があります。
その証明として存在するのが、今回ご紹介する民間資格「医療情報技師」です。
就職・転職を考えているシステムエンジニアの方には、ぜひこの医療情報技師にも興味を持っていただきたいと思い、その内容についてご紹介します。
病院内SE、またの名は「医療情報技師」
ご存知の通り、病院ではさまざまな医療職によって成り立っています。医師、看護師をはじめ、臨床検査技師、放射線技師、理学療法士・・・みな国家資格を持ち、士業としてその能力を発揮しています。資格を取ることが仕事の前提になっているわけですね。
実は病院内SEにとっても、医療とITの知識を兼ね備えた人材を認定する資格として、民間資格である「医療情報技師」があります。病院でシステムエンジニアとして働きたい場合は、まずこの資格を取ることが求められる、と言っても過言ではありません。
なぜなら、この資格を通じて、医学や医療情報システムに関わる知識が身につくからです。
医療情報技師とは
医療情報技師とは、日本医療情報学会が認定している民間資格です。医学医療・情報処理技術・医療情報システムの3分野の試験で構成され、3科目とも合格することで認定されます。
医療情報技師の定義は次のようになります。
医療情報技師とは,「保健医療福祉専門職の一員として,医療の特質をふまえ,最適な情報処理技術にもとづき, 医療情報を安全かつ有効に活用・提供することができる知識・技術および資質を有する者」と定義されます.
(医療情報技師育成部会のホームページより)
病院のシステムを扱う上で把握しておかなければならないのが、上の定義にもある「医療の特質」になります。
具体的には何かというと、厚生労働省から発行されている医療情報システムに関するガイドライン、現場における医療行為や流れ、医学用語、診療報酬制度や個人情報保護法などの関係法令、などが挙げられます。
医学用語? 法令? 突然出てきた畑違いの言葉に、面食らった方もいるかもしれません。「システムを扱うだけで現場仕事はしないんだから、そんな知識要らないよね」と思うかもしれませんが、そうではないのです。
システムエンジニアの仕事といっても、既存システムを管理するだけではなく、新しいシステムを導入したり、新たな運用ルールを定めたりしなくてはなりません。現場の職員と会話する上で、医学用語の基礎がなければ会話が成り立たないのです。
例えば、「患者の看護必要度についてこういう統計を出したい」「PACSでCTRを表示するにはどうすればいいのか」なんて言われても、意味わかりませんね? 医療情報技師の知識があれば、この質問は理解できるようになります。
また病院は、医療法や医師法、療養担当規則といったさまざまな法律・法令に則って運営されているため、このルールを把握しておかなければなりません。何をするにも、まず関係法令を守れているかが最優先の確認事項になります。もちろんそれらの中身を覚える必要はなく、守らなくてはならない法令にどんなものがあるのかを知っていること、が大事になります。
こうした理由から、医療情報技師の資格が必要なのです。
医療情報技師の仕事内容は
医療情報技師について少しご理解頂けたでしょうか。では次に、その仕事内容に触れていきます。
端的に言うと、院内の情報システムを安定稼働させることに尽きます。
モノの整備だけでなく、人へのレクチャーも含めてです。
とは言ってもこれだけでは伝わらないですね。システムの使い方を指南したり、不調のパソコンを直したり、故障の復旧作業に当たったり。パソコンに関わることなら何でもと言っても過言ではないのですが、例えば次のような業務があります。
<例>
- パソコンの起動不良、動作のもたつき解消
- プリンタの紙詰まり対応
- ネットワークの通信障害対応
- 電源やLANケーブルの断線処理
- 新規購入パソコンの見積もり、発注
病院ならではの仕事としては、
- 電子カルテの導入や入替時のプロジェクト推進
- 電子カルテの操作指導、トラブル対処
があります。
日常業務のほとんどは些細なトラブルへの対処ですが、診療に影響するためスピードが肝心。
いかに素早く問題の原因を突き止め、診療再開に持っていけるかが勝負です。
例えば2018年9月に起きた北海道胆振東部地震のときは、システムがダウンし仕事ができないため帰宅する職員もいる中で、自分は夜遅くまで復旧対応に当たりました。皆が出勤してきた翌朝には稼働させ通常の診療を開始できたことには、実にやりがいを感じたものです。
昨今はシステムの管理を業者に外注するケースも増えているかと思いますが、緊急時にはやはり院内の職員による初期対応が必要となります。
医療情報技師の1日
それでは、医療情報技師の仕事に就いたとして、どんな1日を過ごすのでしょうか。
参考までに、私の1日の仕事スケジュールを紹介します。
医療情報技師の役割は勤務先や雇用契約によって様々ですので、参考程度に捉えて頂ければと思います。
1日のスケジュール
8:00 出社
9:00 サーバ点検、メールチェック
電話や訪室による問い合わせ対応
12:00 昼休憩
~13:00
13:00 文書書式の作成
16:00 所属委員会等への出席
17:30 退社
解説
朝は他職員よりも自主的に少し早めに出勤しています。電子カルテや端末に不具合が発生した場合に外来診療が開始できなくなってしまいますので、早期に対応するためです。
頻繁に不具合が起こることはなく、起きたとしても小さなものがほとんどです。エラー画面が出る、画面が真っ暗なままで動かない、といったことはPCに詳しくない人からすれば迂闊に触っていいものか判断が付きません。現場へ急行し、電子カルテが正常に使えることを確認します。
サーバの点検では、異常を知らせるインジケータが表示されていないか、異常音が発生していないか等をチェックします。部品は経年劣化しますので、HDDやUPSがエラーの場合は交換の手配をします。
メールチェックが終わったら、電子カルテの不具合や使い方の問い合わせに対応。電子カルテや部門システムの導入が進んでいると、覚えなければならない製品知識の幅も広くなります。
「PACSでCTR(※心胸郭比)を測るにはどうしたらいいの?」などと医療用語で聞かれることも多いので、PCの知識のみならず医学系も欠かせません。医療情報技師の資格が活きてくるわけです。
しかも問い合わせを受けたときは緊急の対応を必要としていることが多いので、すぐ解決するか、代替手段を伝えて応急措置を取らなければなりません。瞬発力、機動力を求められる仕事でもあります。
昼休憩後は、院内文書の作成に取り掛かります。病院では未だ紙を使うこともありますが、当院では基本的にPCで書類を作ります。新たな書式が必要になったり変更を加えたりする場合は、現場の要求をヒアリングし、形にしていきます。
病院では物事を決めたり周知したりするのに委員会を通すことがほとんどです。電子カルテの運用ルールを決める場合や、メンテナンスでサーバを停止する場合などに委員会で報告します。
特に障害発生がなければ、帰路に着きます。逆に障害が起きた場合は、復旧するまで対応に追われます。翌日の外来診療や入院患者の診療に支障をきたさないよう、迅速に進めなければなりません。
以上、病院内SE・別名、医療情報技師の仕事内容と1日のスケジュールについて紹介しました。
システムエンジニアの方にはあまり馴染みのない職業かと思いますが、病院内SEならではの魅力もあります。当ブログでは下記のような記事も公開していますので、興味があればぜひご覧ください。
就職・転職を考えるシステムエンジニアの皆さんの一助になれば、これほど嬉しいことはありません。
最後に
当ブログでは、病院に勤務するシステムエンジニアの私が、関係法令の改正やパソコンのトラブルシューティングなどをSE目線から紹介しています。
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