こんにちは。当ブログをご覧いただき、ありがとうございます。
管理人の白狐(しろぎつね)です。
院内SEは、よく「社内SEの病院版」と言われます。
言葉だけを捉えるとそうなのですが、実は「会社に勤めるか、病院に勤めるか」の違いだけ・・・ではないんです。
比較されることも多い2つの職業ですが、実は結構違いがあります。
院内SEはマイナーな職業であり認知度が低いことから、インターネットに出ている情報は少なく、実情が分かりにくいのが現状です。
そこで今回の記事では、転職先としてSEがイメージしやすい社内SEと対比させて、院内SEがどう違うかについてわかりやすく解説します。
目次
院内SEと社内SEはココが違う!
院内SEと社内SEの違いを、簡潔な表にまとめました。私の独断と偏見で3段階にて評価しています。
★・・・許容範囲のレベル。
★★・・・他の職業と同じくらいで、普通と言えるレベル。
★★★・・・ほかに比べて特に優れているレベル。
|
院内SE |
社内SE |
給与 |
★ |
★★ |
やりがい |
★★ |
★★ |
ワークライフバランス |
★★ |
★★ |
安定度・将来性 |
★★★ |
★★ |
社内SEが全部★★なのはなんで?
私が社内SEを経験したことがなく、知り合いやインターネットからの情報をもとに評価したので一律同じにしました。ご容赦ください。
以下、順に説明していきます。
給与 ★
え・・・自己評価低いね。
あまり正直な話はしたくないですが、現実を知っているからこそあえて辛口の評価をしました。
就職先によって千差万別ですが、一般的に「社内SEに比べて」院内SEの給与は低いと言えます。
システムエンジニアが次の仕事として社内SEを考える理由はおそらく給与にあるのではないか、と思います。
なぜなら、給与水準が下がらないから。
それもそのはず。
社内SEを求めている企業は社内のシステムを効果的に運用することが会社の利益に寄与することを理解し、評価しています。「動いてさえいればいいんだからそんな人材は必要ない」と考える企業は、わざわざ人を雇うことはしません。
いっぽうで、院内SEは多くの病院では事務職の扱いに留まります。電子カルテのようなシステムを扱う仕事であっても、専門職を置かずパソコンに詳しい事務員が兼務しているケースが多々あります。
システムの規模が大きくなると兼務では難しいため、専門職が置かれていることが多いです。つまり、「雇わざるを得ず雇っている」ところがあるのです。
こうした背景から、院内SEの給与は事務職と同等に落ち着いてしまい、スキルが評価される社内SEに比べ待遇は落ちます。
しかし院内SEの名誉のために断っておきますが、低すぎて生活できないレベルではありません。
その病院がある地域の平均給与並みくらいです。
実際、私もなんとか結婚して子どももいます。
では、実際給与はいくらくらいなのでしょうか? これについては、下記記事で書きましたのでそちらを見てくださいね。
やりがい ★★
「ITスキルを活かせるか」という意味でのやりがいについては、社内SEに軍配が上がるでしょう。
なぜなら院内SEの仕事に開発はほとんどなく、既存のシステムを問題がないように管理・運用することがメインだからです。
新しいシステムに入れ替える場合も、基本的にはベンダーが主体となって導入作業を進め、現場の職員とベンダーの意見を調整する橋渡し役となります。
自ら手を動かしてモノを作ることはあまりないため、コードをバリバリ書きたい、最新の技術を使ってサービスを世にリリースしたい、といった意欲がある人にとっては飼い殺しのような状態になってしまい、向かないでしょう。
いっぽうで、「地域社会に貢献している」という意味では院内SEには大きなやりがいがあります。電子カルテが止まってしまえば診療不能となりますので、障害が起きたら即座に対応し、スピーディーに平常運転に戻さなければなりません。
今までもっとも印象に残っている障害対応は、やはり2018年9月の北海道胆振東部地震によるブラックアウトですね。
出典:
https://www3.nhk.or.jp/news/special/sci_cul/2018/09/story/special_180913/
これぞ障害対応、というケースだね。
北海道全域が停電しましたからね。外は信号機も街灯も点いていないので、真っ暗のなか出勤して復旧作業に当たりましたよ。
いつ電力が復旧するか見通しがつかないなか、自家発電で何日持つかを院内で情報共有しつつ、復旧したら速やかに診療再開できるよう、ベンダーとも何度も打ち合わせして復旧作業に当たりました。
休診対応を取る病院が多いなかで、対策が奏功しブラックアウトの翌日には診療を再開できたことには達成感がひとしおでした。
地域の病院関係者が集まった会合で、「うちは翌日には外来開けたんですよ」と自慢気に話していた事務長の顔は忘れられませんね。
ワークライフバランス ★★
ワークライフバランスについては、院内SEと社内SEは同じくらいと言えるのではないでしょうか。
社内SEは、開発系と比べ夜遅くまで残業したり休日出勤したりといったことは少ないと思います。院内SEも、基本的には障害が起きなければそれでよいので、無闇に残業したり休日に呼ばれたりすることはありません。
「良いモノを作る」のが仕事である開発系に比べて、院内SEの仕事は「動いて当たり前のシステムを維持する」仕事です。なので、極端な話「何もトラブルがなければ帰る」のが日常のルーティーンになります。
やや語弊のある言い方になりますが、楽と言えば楽です。納期に追われ日々残業、なんてことはまずありません。
また病院という仕事柄、病気や怪我に対し理解のある人が多く、「風邪でも薬飲んで出てこい!」みたいなノリはありません。というより、そういう人に出勤されては院内感染のリスクがあるためむしろ「来るな」と言われます。
また、職員の大半を女性が占めるため、家事や育児などへの理解も高いのも特徴。ためらいなく「子どもの授業参観に出るため」「病院に連れていくため」という理由で有給が取れるのは、最近では一般企業も同じかもしれませんが、病院ではそれが顕著ですね。
安定性・将来性 ★★★
さて最後になります。
安定していて将来性もある。これが院内SEの最大の魅力です。
病院はその地域に必ずなくてはならない存在であり、社会的にも存在意義の高い職場です。この記事を読んでいるあなたの地元にも、必ずありますよね。
栄枯盛衰の激しいIT業界に比べ、歴史があり、長く将来に渡って地域社会を支える存在ですので、そう簡単に潰れることはありません。職場としての安定度はお墨付きです。
病院内で稼働するシステムも年々高度化・複雑化しているため、専門家である院内SEの存在は今後ますます重要性を増していきます。医療従事者のニーズを汲み取り、実現可能性を見極めながらコストも考慮しつつシステムに反映させていく仕事は、AIやRPAが発達しても置き換えることのできない業務です。
院内SEの詳しい仕事内容については下記の記事を読んでいただきたいのですが、病院内SEに求められるのは、プログラミングなどのスキルよりも、システムで実現可能な範囲を現場に理解させる対話能力や交渉術、突発的な障害に応急措置できる臨機応変さ、PCがわからない人にも丁寧に教えられる丁寧さなど、人的な能力です。
ヘルスケアがますます注目されるなか、病院のIT化を一手に担う院内SEの役割は今後も大きいと言えます。
こうした人的能力というのは、一般的には社会経験が長ければ長いほど鍛えられ、熟成されてくるもの。若い人よりも30代以上のベテラン層の方が、より長けているはずです。
若い頃はガツガツしていて周りとぶつかってばかりだった、無茶をして上司から怒られてばかりだった・・・というエピソードがだれしもあるでしょう。
院内SEに求められるのはそのようなガッツではなく、職場の人間関係に配慮しながら物事を前に進められるファシリテーション(調整役)です。
子どもの頃から知っている、馴染みある病院というものが誰しもありますね。
その病院にも、現場の診療を支えるエンジニアがいます。
これまでの経験を活かし、SEの仕事を通して地域の発展に貢献するという選択肢も、アリだとは思いませんか?
以上、病院にSEとして勤務する私から、院内SEと社内SEの違いについてご紹介しました。
どの仕事にも必ず一長一短があるものです。
転職を考えるシステムエンジニアの皆さんにとって、本記事が選択の一助となれば幸いです。
「病院という職場に興味が出てきた」「どんな職場なの?」という方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。
最後に
当ブログでは、病院に勤務するシステムエンジニアの私が、関係法令の改正やパソコンのトラブルシューティングなどをSE目線から紹介しています。
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