こんにちは。当ブログをご覧いただき、ありがとうございます。
管理人の白狐(しろぎつね)です。
院内SEの求人は、ほとんどがスキルや経験を買う中途採用です。
なぜなら、一から育てる余裕が病院にはないからです。
院内SEは存在自体があまり世間に知られていない職種なので、学生の時点で院内SEになりたいと思う人はかなりレアな存在。
とはいえ当ブログは院内SEの認知度を広めるために書いていますので、レアな需要に対しても、現職である私なりの回答を示したいと思います。
目次
- 新卒で院内SEになるのは難しい、というよりオススメしない
- 理由1 新卒の求人が絶望的に少ない
- 理由2 学生のうちは病院の実務を学ぶ機会がない
- 理由3 若いうちはSEの腕を磨くべき
- 学生時代に身に着けたいスキルとは
新卒で院内SEになるのは難しい、というよりオススメしない
結論から言うと、現実を突きつけるようですが、新卒で院内SEになるのは難しいと言えます。仮に出来るとしても、個人的にはオススメしません。
(新卒で院内SEとして働いている方、申し訳ないです・・・)
「え? なんで?」
「その理由を3つ、説明しますね。」
理由1 新卒の求人が絶望的に少ない
まずはわかりやすい理由から。新卒の求人が絶望的に少ないからです。
少ないどころか、ゼロと言っても過言ではないかも。
「ホントか? なら証拠を見せてもらわないと」
と思う方は、下記のサイトを覗いてみてください。
「医療情報技師」とは、要するに院内SEのことです。
院内SEとして認定する資格、と捉えてもらえばよいでしょう。
このサイトは、その医療情報技師の求人情報をまとめたものです。
応募資格を見てもらえば、ほとんどが「医療システムの開発経験○年以上」「医療情報技師の経験○年以上」という具体的な条件が付いているのが分かります。
初めから、能力を持っていることを前提として求人が出されているのです。
理由は簡単。一から育てるだけの余裕が、病院には無いからです。
組織の規模が大きく、情報システム部門(情シス)がしっかり存在する病院は例外として、ほとんどはひとり情シス、もしくは2~3名程度の人数で切り盛りしているのが一般的。
社員の少ない中小規模の事業所では、少人数で回すのが当たり前なのは病院も同じです。
指導者が付いて、新人に手取り足取り教えてくれる病院はかなりの少数派、と言っていいでしょう。
「ドラゴンボールに例えれば、ラディッツ襲来のときに幼少期の悟飯がピッコロに連れていかれ、何も教えられないまま『まずはここで生き延びろ』と荒野に放たれるような感じですね。」
私は数年のSE経験を経て院内SEになったのですが、先輩から丁寧に教えてもらったことはほぼありません。(先輩には口が裂けても言えませんが・・・)
「いちいち教えないから、仕事は自分で覚えていってね」
という感じでしたね。まあ、中途採用とはそういうものですよね。
実は、なぜ新卒を雇わないかと言えば、余裕がないこと以外にも理由があります。
それが、次に示す2つの理由です。
理由2 学生のうちは病院の実務を学ぶ機会がない
院内SEに求められるのは、SEのスキルだけでなく病院の実務を理解できていることです。どちらかだけではダメで、両方備わっていなければならないのです。
「実はそれを兼ね備えた人というのが、先ほど出てきた『医療情報技師』なんですね。」
具体的には、下記のような内容です。
- 病院が収益を上げる仕組み(=診療報酬の仕組み)
- 患者が受診してから、診察や検査をして会計を済ませるまでの業務フロー
- 医療情報システムに求められる要件 ・・・等
特に3つ目の「医療情報システムに求められる要件」に関しては、業界固有の知識が問われるため、経験がないとなかなか身に着くものではありません。
医療情報技師の資格試験には、医療情報システムの理解を問う分野があります。それを知っている方は、
「医療情報技師の資格が取れる専門学校があるから、そこを出れば大丈夫でしょ?」
と思うかもしれません。理屈の上ではそうなりますが、現実的には難しいところがあります。
基本情報技術者に合格したからといって、コードが書けるか、と言えばそうとは限らないのと一緒です。ソフトウェア開発の会社で働くなら、資格を持っているよりもコードが書けることの方が大事に決まっていますよね。
上に挙げた病院の実務を、実践レベルで身に着けていることが大切。
学生のうちに習得するのは至難の業と言えます。
「ドラクエに例えれば、職業『賢者』みたいなものですね。最初から賢者を選ぶことはできなくて、魔法使いと僧侶を両方経験して初めて転職できる。これをイメージしてもらえばよいと思います。」
「じゃあ君はどうやって院内SEになったんだ?」
「私はSEから医療事務に転職して、そのあと院内SEになりました。」
「魔法使い→僧侶→賢者、みたいな感じね。」
病院の実務を覚えるには、医療事務が適しています。
なぜなら、上に挙げた1つ目、2つ目のような役割を担うのが医療事務だからです。
医療事務の仕事は、窓口の会計業務や患者の案内など。さまざまな部署と情報をやり取りして診療行為を数値化し、計算していきます。多くの部署と関わるため、院内の業務フローに関しては一番詳しい立場かもしれません。
以上のことから、「院内SE=SE×医療事務」の方程式が成り立ちます。
「じゃあ、医療事務からSEになってもいいわけだね?」
「そうですね、十分可能です。ですが、もしあなたが学生ならSEから始めるのをオススメします」
▼医療事務から院内SEになるための参考記事をこちらに書きましたので、良かったら併せてお読みください。
理由3 若いうちはSEの腕を磨くべき
冒頭で、「仮に新卒で院内SEになれるとしてもオススメしない」と述べました。
そのわけは、「若いうちは純粋にSEの腕を磨くべき」だからです。
どうしてかと言うと、院内SEの仕事ではSEとしての腕は上がらない、と考えるから。
院内SEの仕事は、主に既製システムの運用・管理。先に紹介した規模の大きい病院では開発業務もありますが稀なパターンで、ほとんどの病院では、既製品で実現できない部分の穴埋めをするのが仕事です。
つまり、SEの本分と言えるコーディングスキルを磨くシーンがほとんどありません。当然、要件定義やデバッグなどもやりません。
ところが、「穴埋め」をするのにプログラムを作らなくてはいけない場合が出てきます。とは言っても大掛かりなものを作るのではなく、VBAの作成やデータベースの操作といった簡単なものですが、学校の座学で学んだだけでは、「一からプログラムを作れ」と言われても難しいですよね。
当然ながら、理由1で説明した通り、誰かが丁寧に教えてくれるわけでもありません。
「むしろ、『それくらい分かってるよね?』という雰囲気ですね。」
▼院内SEにオススメするプログラミング言語をこちらの記事で紹介しています。ぜひお読みください。
一度でも開発系の会社で働いたことがあれば、「こういう機能を果たすプログラムを作ってほしい」と言われれば、何から始めればよいのか分かりますよね。
「ざっくり要件定義まとめて、フローチャート描いて・・・みたいな感じね。」
プログラマーの中には文系大学出身者も多くいますし、趣味でプログラムを作っている人もいますので、必ずしも「開発系でSEとして修行すべき」とは思いません。プログラムが書けさえすれば問題はないのですから。
とは言え、院内SEがプログラムを作る場合は制限された開発環境のなかでやらなくてはなりません。
(詳しくは、上で紹介したプログラミング記事を参照)
例えば「Pythonを使いたい」と思っても環境構築すらできませんので、「こういうときはこの言語使えばいけるな」という感覚で進めなくてはならないわけです。手持ちの環境でどこまで出来るかを見定められるスキルが必要になります。
それは、ある程度SEとして実務経験を積んでないと難しいかな、と私は思います。
「悟飯が荒野に放置されて、『どうやって生き延びればいいんですか』と聞くようではダメだ、ということですね・・・」
もちろん、院内SEの仕事をしていく過程でコーディングスキルが上がっていくことも無くはないでしょう。ところが毎日コードを書くわけではありませんし、「必要に迫られたときにパッと作って、それでお終い」なところがありますので、やはり腕を上げるなら純粋にSEの仕事をやるほうが適しています。
言ってみれば、院内SEは「今まで培ってきたスキルでやりくりしていく」仕事と言えます。
学生時代に身に着けたいスキルとは
以上、新卒で院内SEになるのは難しい理由を3つ説明させていただきました。
私としては、院内SEを志望する学生には「まずはSEとして腕を磨きましょう!」と伝えたいですね。SEが本来持つべきスキルは、やはり開発業務などで培われるものだと思います。
そして院内SEを目指すなら、学生時代にぜひ経験しておいてほしいことがあります。こちらの記事で詳しく書きましたので、関心のある方は併せてご覧くださいね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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