病院の情シスで働く医療情報技師の奮闘記

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病院内SE目線のBCP対策

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東日本大震災のときに注目されたBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)。言わずもがな、災害発生時においても事業を継続するために平時のうちから策定しておく計画のことで、地震のみならず自然災害が年々激化していく昨今では、地域医療を支える病院においては必須の対策と言えます。

 

しかしながら、実際の策定状況はそれほど進んでいないようです。厚労省が取りまとめたアンケート資料によれば、2019年4月1日時点でのBCP策定状況は全体の25.0%だそうです。

 

www.mhlw.go.jp

 

北海道は2018年9月にブラックアウト(道内全域停電)に見舞われ、病院も停電で対応に追われたのは記憶に新しいところですが、それ以降も全国的に大雨による洪水や土砂崩れなどが毎年報じられ、災害対策は待ったなしの状況であることは誰もが認識しているはず。にもかかわらず策定がなかなか進まないのは、BCP策定の難しさを物語っていますね。

 

SEとして考えるべきことは

病院内SEとしてBCPに関係するのは、電子化されたカルテをどのようにして災害時にも使えるようにするか、という点に尽きます。どうすれば使えるようになるか、ということはつまり電子カルテの「心臓部」がどこかをしっかり把握し、そこを守るように対策しておくことと言えます。

 

例えば最近では、クラウド化された電子カルテサービスが登場してきています。通信環境さえ整えば、院内だけでなく自宅や訪問先からいつでも・どこでも参照でき、ハードウェアの追加や交換も容易であるなど利便性の高いですが、その通信環境がネックになることがあります。

先のブラックアウトのときは、病院近隣の電波塔もダウンしたため携帯電話など通信手段が軒並みダウンし、周囲との連絡手段が遮断されました。こうなるとクラウドの場合、カルテにまったくアクセスできなくなってしまいます。

反面、院内にサーバを設置していれば、サーバとクライアント間の通信が途絶えなければ電子カルテを稼働させられます。利便性だけでなく、災害時の対応を加味したシステム構成にしなければなりません。

 

院内にサーバを設置していても、肝心の電源が供給されなければ動きません。UPSの持ち時間は想定でどれくらいか、非常用電源は定期的に点検しているか(非常時に動かないようでは意味がありませんね)、それはどれくらいの時間持つのか、などあらかじめ把握しておくことが適切な対応につながります。非常用電源はあるがサーバと接続されていなかった、という笑えない話も実際には起こりますので、確認は入念にしておくべきです。

また非常用電源が動いていても、人工呼吸器などの医療機器への供給が優先になりますので、サーバにどれくらい割けるのかも考えなければなりません。入院患者の指示簿指示や直近の処方箋などを印刷するなど、「サーバが動いているうちにすべきこと」を事前に洗い出しリストアップしておくとベターでしょう。

 

サーバや基幹スイッチの設置場所もどこでも良いわけではありません。ハザードマップで病院の水害リスクを調査し、河川の氾濫時に浸水のリスクがあるようなら、2階以上の階層に置くのが望ましいですね。サーバ単体なら事務職員でも設置場所は気にするでしょうが、基幹ハブや壁中のLANケーブルまでも保護しなければ機能しませんので、システムの全体像を把握している病院内SEの出番になります。

 

災害時は紙カルテ運用になる

停電が長期に及ぶと非常用電源もあてに出来なくなるため、紙カルテの運用方法も事前に周知しておくことが大切ですね。普段はシステムから出力する帳票や処方箋、診療情報提供書なども印刷できなくなりますので、空白の用紙を備え付けておくと役立ちます。

 

電子カルテに慣れていると、いざ紙運用に切り替わったときに「あれがない、これがない」とあたふたしがちです。メンテナンスやバージョンアップなどでシステムを一定時間止める機会があるかと思いますので、そうした折に紙運用時のルールを再確認するとともに、必要な帳票類が備え付けられているかを点検しておくと、万一のときに「あれ、どうするんだっけ?」とならずに済みます。また、現場職員にとっても災害時対応を思い出し、記憶を留めておくことにもつながります。

 

2019年に台風15号により千葉県で大規模停電が長期化した際には、電信柱などの送電経路が損壊したことが原因でした。建物に直接的な被害がなくても、周囲の環境によっては影響を受けることもあります。年々、自然災害の規模は予測不可能なレベルになっていますので、日ごろから対策を考えておくことが欠かせません。

 

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