病院のSEとして10年以上働いている白狐(しろぎつね)です。
医療情報技師と院内SEの違いをご存知ですか?
この2つは同じ仕事に思うかもしれませんが、実は似ているようで少し違います。
これから医療情報技師または院内SEを目指す方は、的確な仕事選びをするためにも違いをきちんと知っておく必要があると言えます。
仕事を探すときに、職種名を間違えば求人がヒットしないもんね。
そこでこの記事では、医療情報技師と院内SEの違いについて現役で働く立場から説明したいと思います。
よく混同される「医療系SE」や、医療情報技師の資格を取る意味についても触れますので、ぜひ最後までお付き合いください。
目次
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医療情報技師=資格、院内SE=職種
端的に表すと、「医療情報技師=資格、院内SE=職種」となります。
医療情報技師とは「医療情報技師能力検定試験」に合格した者に与えられる称号のこと。
医療情報技師とは,「保健医療福祉専門職の一員として,医療の特質をふまえ,最適な情報処理技術にもとづき, 医療情報を安全かつ有効に活用・提供することができる知識・技術および資質を有する者」と定義されます.
「一般社団法人日本医療情報学会」が資格試験を運営しており、実は商標登録もされています。
https://www.jami.jp/jadite/new/bukai/trademark.html
資格に合格すれば、「医療情報技師」を名乗ることができます。
このため、ひとくちに医療情報技師と言っても、システム開発ベンダーの社員だったり、病院に勤めるSEだったりします。医療情報技師を職種とみなすこともできますが、それは病院に勤務する場合に限った話です。
病院に勤めるなら、医師や看護師と同じように職種として「医療情報技師」になるわけね。
そういうことです。
実際、医療情報技師を持っているベンダーさんも多くいらっしゃいます。
医療情報技師を持っていると、病院で稼働するシステムの要件や医療界ならではの現場環境を知っているとみなされますので、病院の職員から「話が通じる人」と認識されやすくなるためです。
基本情報技術者など情報処理系の資格に比べ、「医療職と対話できるだけの知識がある」とみなされるところが医療情報技師の強みと言えます。
以上のことから、医療情報技師の勤務先には2通りあります。
- 医療情報システムを開発するベンダー(システムを納める側)
- 病院(システムを発注する側)
前者のベンダーに勤める人を、「医療系SE」と呼んだりします。インフラ系SE、Web系SE、などと同じような括りですね。
広い意味では院内SEも医療系SEの括りに入るかもしれませんが、「院内SE」という表現があるので、普通は「医療系SE」と「院内SE」は区別します。
そして病院に勤める医療情報技師が、いわゆる院内SEということになります。
医療系SEと院内SEは区別して考えよう
以上が、医療情報技師と院内SEの違いです。
ところで、前述した「医療系SE」と「院内SE」は明確に区別すべきと私は考えています。理由は、これらがまったく別物の職種だから。仕事を探す上ではこれらの違いについても知っておいた方がよいので、説明していきます。
医療系SEとは
医療系SEは、ベンダーに勤務し、医療情報システムを開発する側を指します。システムの要件定義、仕様設計、コーディング、デバッグといった他の開発系SEと同じ業務に当たります。これぞSEと呼べる、ゴリゴリのシステムエンジニア職です。
年収は他のSE職と同等に考えてよいでしょう。医療系システムは専門性が高く規模も大きいため、人材を集約しやすい都市部に本社を置くことが多いです。求められるスキルは、当然コーディングなどのSE的なスキル。
また、システムの納品や導入後の稼働支援として、全国支部への転勤や長期出張もあり得ます。
北海道で言えばベンダーは札幌に拠点を置き、システム導入時には道内各地の病院へSEを派遣する、といった具合です。
▼参考記事
院内SEとは
いっぽう院内SEは、病院に勤務し、医療情報システムを保守する側を指します。大病院ではシステムの開発を行うところもありますが、中小規模の病院ではまず行いません。障害が起きていないかどうかを日々点検する作業、病院職員に対する操作指導・ヘルプデスク、トラブル対応など医療現場の後方支援が主な仕事になります。
年収は、その病院の事務職員と同列になることが多いです。「SE」という名の職業であるにもかかわらず、扱いは事務レベルであることがほとんど。(もちろん、SEとして高く評価してくれるところもありますが、稀・・・)
病院は都市・地方に関係なくどこにでもあるので、働く場所を選びやすいのが特長です。医療系SEで働くなら都市部での就職になりがちですが、病院ならば地元で働くのも可能になります。
求められるスキルは、医療従事者たちと対等に話し合い、システムの実現可能な範囲を理解してもらうコミュニケーション能力、つまりヒューマンスキルです。
また、国立病院や全国展開する大きな病院でもない限り、病院に支部はありませんので転勤もありません。
▼参考記事
▼院内SEと医療系SEの違いを簡単にまとめると、下図のようになります。
この2つがいろんな面で異なることが、お分かり頂けると思います。
仕事を探すとき、年収や仕事内容、勤務先の将来性などをしっかり把握すべきなのは言うまでもありません。違いをしっかり押さえておきましょう。
院内SEが医療情報技師を持つ意味とは
ところで、医療情報技師の資格がなくても院内SEの仕事に就くことは出来ます。資格がなければ出来ない仕事(業務独占資格)ではないからです。
しかし多くの場合、病院に勤めたら医療情報技師を取れと言われます。なぜなら、この仕事の基礎を築くものだから。
IT企業に勤めるSEなら、少なくとも基本情報技術者は取れと会社から言われるのではないでしょうか。同じように、病院では医療情報技師が求められます。
詳しくは下記記事を参照して頂きたいのですが、医療情報技師の資格を持つことは個人にとってだけでなく、病院にとってもメリットがあります。医療情報システムを専門職が適切に管理している、と外部の評価機関からみなされるからです。
評価機関のことを正式には「日本医療機能評価機構」と言い、医療の質改善のために中立的・科学的・専門的な立場から病院を評価し、結果を公表しています。
病院にも公立と私立とがありますが、私立と言えども公的な存在ですから、公共の利益に貢献するよう、経営にはさまざまな法の制約や外部からの監査を受けます。
医療法、医師法、薬剤師法、診療放射線技師法・・・関係する法令を挙げればキリがありません。どんな病院も、必ず法に従って運営しなければなりません。
医療情報システムも、法の制約を受ける対象となります。カルテには患者の病歴や家族関係など通常の個人情報以上にデリケートな内容を含みますので、扱う者には相応の適格性が求められます。医療情報技師の資格は、その適格性を示すものとしてみなされるわけです。
医療情報技師の資格は、院内SEにとって欠かせないものだということね。
私はそう考えています。
転職に失敗しないために考えるべきこと
以上、医療情報技師と院内SEの違いについて、医療系SEについても触れながら見てきました。
それぞれの職種の特徴を知ることで、希望にマッチする求人を探しやすくなるはずです。
例えば院内SEになりたいなら、「医療情報技師」という言葉を知っているだけで求人検索の幅が一段と広がります。
医療情報技師を目指すにしても、ベンダーと病院どちらに就職するのか、どういう違いがあるのか、を把握しておくと「こんなはずじゃなかった」と後悔するのを避けられます。
ところで私は過去に3回転職を経験しましたが、あまり後悔をしたことはありません。次の職場に行くときは、「得るものは○○で、失うものは○○だろうな」とあらかじめ想定していたからです。
個人的な考えですが、後悔しない転職をするには「何を捨てるか」を決めることが大事だと思っています。「得られるもの」だけでなく、「失うもの」にも目を向ける必要がある、と考えるからです。
このテーマについて、私なりの考えを下記記事にまとめましたので興味があれば併せてご覧ください。
あとから後悔するくらいなら、捨てるものを最初から決めておく。そうすることで迷いが消え、得るべきものに集中できるのではないでしょうか。
さて手前味噌ですが、このブログでは院内SEにまつわるさまざまな情報を発信しています。
特にIT業界に勤めるSEにとって、院内SEは転職先の候補になりうる職種。知らないのはもったいないことです。
この仕事に興味を持ったら、ぜひこちらのページから関心のあるテーマを探してみてくださいね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
最後に
当ブログでは、病院に勤務するシステムエンジニアの私が、関係法令の改正やパソコンのトラブルシューティングなどをSE目線から紹介しています。
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