こんにちは。当ブログをご覧いただき、ありがとうございます。
管理人の白狐(しろぎつね)です。
ITに明るい方なら既にご存知だと思いますが、ついにMicrosoftがInternet Explorer 11(IE11)のサポート終了を正式にアナウンスしました。
サポート終了の意味は、平たく言うと「終了後は改修をしないし欠陥が見つかっても直しませんので、使用不可とします」ということです。
このサポート終了は、システム面にとても大きな影響があります。
なぜなら、世の中にInternet Explorer 11を土台に設計されているシステムが多数あるからです。
その土台が崩れるため、代わりのものを用意しなくてはなりません。
「丈夫だと思っていた地盤が沈みかけているので、家の安全性を確かめなくてはならない!」くらいの影響度があります。
サポート終了後の運用、いわば「アフターIE」の世界を考える必要があります。
そこで今回は、このInternet Explorer 11のサポート終了に伴い、病院がすべき対策について考えます。
Internet Explorer 11のサポート終了が一大事な理由
Internet Explorer の重要性については業界関係者なら説明不要でしょうが、そもそも、どうしてInternet Explorer 11のサポート終了が一大事なのでしょうか。
現在、インターネットの閲覧ソフト(ブラウザ)は、速さに定評のあるGoogle社のChromeやiPhoneにも搭載されているApple社のSafariなどが主流です。
Internet Explorer 11は古いため推奨されないことが多く、一般消費者にとってはほとんど問題になりません。
ところが、法人向けシステムでは未だにInternet Explorer 11が主流であることが多いのです。
理由は、Internet Explorer を土台としたシステムが根幹を成しており、容易に変更できないからです。
例えば、住宅街の下に地下鉄を通そうと思っても容易には出来ませんね。地上に何もない更地の下を通すのとは、訳が違います。
土台を変えるということは、「その上に成り立っているもの」をどうにかしないといけません。
また、「Webサイトを表示するソフトならどれも一緒でしょ」と思うかもしれませんが、ブラウザは普通、機能改善やセキュリティ向上を目的として頻繁にアップデートされます。
法人向けシステムには安定した稼働が求められますが、ブラウザの仕様がしょっちゅう変わるようでは、それを保証することが難しくなります。
そのため、Internet Explorer を土台とし、さらにはインターネットには繋がらない環境に制限したり、頻繁にアップデートが走らないようにWindows Updateを制御できる特殊なバージョンのWindowsを要件にしたりしています。
そこまでしてInternet Explorer をベースにシステムを構築しているため、使用できなくなるとなると大打撃となります。
サポート終了は2022年6月15日
Microsoftの公式ブログによると、Internet Explorer 11のサポート終了は2022年6月15日とされています。
この日を持って、長年Windowsユーザーに愛されてきたInternet Explorer がついに終焉を迎えることになります。
一部の方は、「えっ、とっくにサポート終了しているんじゃなかった?」と思うかもしれません。
実はそうではないんです。
以前Microsoftが、自ら提供するWebサービスの要件から「Internet Explorer 11を外す」と発表したため、これがサポート終了と誤解されたのです。
言い換えると、「Microsoftのサービスを使うには、Internet Explorer 11ではダメですよ」と言っただけであり、Internet Explorer 11自体が使えなくなるという主旨ではなかったのです。
▼これに関しては、当時窓の杜で特集記事が組まれていました。
ただ、これが布石であったことには違いありません。
サポート終了の準備は着々と進められていたが、1年は短い!
しかし今回の告知は、何も寝耳に水な話ではありません。
何年も古いソフトが使われ続けている状況だったため、業界関係者は「いつ終わりが来るか」を注視していました。
実は、Microsoftはこれまで時間をかけてInternet Explorer 11からMicrosoft Edge(エッジ)への転換を推進してきています。
例えば、特定のサイトを見るときには強制的にMicrosoft Edgeに切り替わるようにプログラムを変えました。
▼このプログラムの中身についてこちらの記事で取り上げていますので、併せてご覧ください。
「ついに来たか」という感じではありますが、準備期間として「1年」は短いぞ、という印象です。
サポート終了=使用できなくなる
「サポート終了」という言葉は曖昧な表現で、大きく2つの意味で使われることが多いです。
- 使用はできるが、今後バージョンアップはしない
- 使用すらできなくなる
2の場合、代わりの手段を用意しなくてはならないので、急いで対応の仕方を考える必要があります。
今回のサポート終了は、なんと2です。使用不可となります。
Microsoft公式サイトのFAQに、はっきりと書かれています。
(※ここに書かれている「IEモード」については後述)
引用元:
https://blogs.windows.com/japan/2021/05/19/internet-explorer-11-desktop-app-retirement-faq/
これに似た話で、以前Flashがサポートを終了したときは、Flash閲覧のためのソフトウェアがWindows Updateにより強制的に削除されました。
削除されてしまったら、その後は当然ながらFlashを再生することが出来なくなります。
▼詳しくはこちらの記事をご覧ください。
Internet Explorer の代わりはMicrosoft Edgeだが安心は禁物
Internet Explorer 11が使えなくなる代わりに、MicrosoftはMicrosoft Edgeを使えと言っています。
Microsoft Edgeに、Internet Explorer の動作をエミュレーション(模倣)するモード(=IEモード)が搭載されているので、それを使えばIEの代わりになるとのこと。
IEモードのためにInternet Explorer 11のプログラム自体は削除されないが、単体のソフトとしては使えなくなる、というわけです。
しかし本物のInternet Explorerとイコールではないので、完全再現できるわけではないですし、私の経験上、こうしたエミュレーションでは何らかの不具合が起きます。
画面レイアウトが崩れる、ボタンを押しても反応しない、などなど。
このため、Microsoft Edgeで本当に事足りるのかは検証が必要になります。
病院がこの1年ですべきこととは
終了まで約1年というと長いように思えますが、システムを改修する可能性を考えれば短いと言えます。
システムを改修するまでには、大雑把に言うと次のステップを踏みます。
- システムの納品ベンダーが改修費を見積もる
- 病院が予算を確保する
- 改修プログラムをリリースする
まずは、Internet Explorer で動いているシステムを洗い出すことが先決です。
よくあるケースとしては、勤怠管理システム、グループウェア、物品発注システムなどが挙げられます。
これらはオンラインで情報をやり取りするソフトなので、必然的にブラウザを使います。他のブラウザにも対応していれば問題ありませんが、古いものだと未だにInternet Explorer ベースの場合もありますので、確認が必要です。
自分で判断できない場合は、納品ベンダーに問い合わせましょう。
改修するにも予算を確保しなければいけませんので、早めに改修の必要性と見積もりをベンダーに確認してもらいましょう。
以上、Internet Explorer 11のサポート終了が病院に与える影響について取り上げました。
この話は前から話題になっていたので、もしかすると業者は織り込み済みで、システムの改修は必要ないかもしれません。
しかし早めに動くことに越したことはないので、あとから困らないよう、しっかり準備していきたいものです。
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