LINEがオンライン診療に本格参入するとのニュースが入ってきましたね。すでにLINEはエムスリーとの合弁会社であるLINEヘルスケアを設立し、LINEを使ったオンライン診療のマニュアルを公開していますが、アプリによる診療を強化するようです。
LINEは国内最大のユーザー数を誇る連絡手段
ご存知の通りLINEは国内最大規模のメッセージ交換アプリで、スマホを持っている=LINEをしている、と言っても過言ではないほど多くのユーザーに利用されています。下記サイトによれば月間アクティブユーザー(実際に使っている人)数は8,400万人にも上り、もはやSNSの域を超えて電話・メールに代わる通信手段となっています。
驚くべきは、60代の利用者割合が57.4%とおよそ6割が使っているというデータです。これは実感するところがあって、パソコンが苦手な私の父も最初は嫌がっていましたが、家族だけでなく仕事先や友人からLINEで連絡出来ないかと言われることが多くなった結果、仕方なく使い始めました。
これだけユーザー数が増えたのは、やはり便利だからでしょう。「壊しそうで扱いにくい」とスマホを毛嫌いしていた父も、家族全員にメッセージを一斉送信できるグループ機能や、写真・動画などを簡単に送受信できる機能にのめり込み、今ではすっかりヘビーユーザーと化しました。
LINEはFacebookやTwitterと違って連絡手段としての位置づけですから、使う側としても敷居は比較的低いものと思われます。
導入における時間的・費用的コストが低い
オンライン診療を行うには、当然ながら設備投資が必要です(電話のみで行う場合は除く)。セキュリティのため電子カルテと分離したネットワークにインターネット環境を構築し、ビデオ通話や診察予約、会計などを支援する専用システムの導入が欠かせません。また患者側もアプリをインストールし、操作に慣れる必要があります。病院スタッフや患者がシステムに慣れるまでは試行錯誤が続くことが予想されます。
またシステム面だけでなく通信インフラの整備も必須になります。別記事で触れていますので、こちらも併せてご覧ください。
いっぽう、LINEだと普段から使っているためそれほど操作に迷いがないはずです。周りに利用者も多いでしょうから、困ったら使いかたを相談することもできます。
病院側も同じ理由で、導入における時間的・費用的コストが他システムに比べ低く済むでしょうからメリットが大きいです。
オンライン診療をワンストップでサポートできる?
またLINEでは、テキスト入力をしなくても簡単なボタン操作のみで相手とやり取りする機能があります。使ったことがある方ならば分かると思いますが、事業者が消費者とコミュニケーションする「LINE@」サービスです。例えばガソリンスタンドのLINE@を友だち登録すると、「ガソリン価格」というボタンをタップするだけでリアルタイムの価格を知ることができます。
個人的にはこれがキモだと思っています。例えば「診察予約」「会計」といったボタンを押すとナビゲーションが現れ、画面の指示に従うだけで診察が進めば患者側は戸惑いにくいですよね。毎月の保険証確認についても、スマホで写真を撮って即時に送るといったことも可能でしょう。またLINEペイというスマホ決済サービスを展開していますので、LINE上で会計を済ませるといったことも実現しそうです。
診察予約からビデオ通話、会計までを慣れ親しんだアプリで出来るのなら、「やってみようか」となる人も多いと思います。
セキュリティの担保が課題か
当ブログでオンライン診療ネタを取り上げるに当たりいつも述べていることですが、個人情報の保護とセキュリティをどう担保するかが最終的には壁になると思います。通話内容が盗み聞きされる、診察中誰かに乱入される、見知らぬ人が医師に成りすましている、といったリスクを回避しなければなりません。
PCを使ったオンライン診療であれば端末を持ち出さなければ成りすましは難しいでしょうが、スマホならどこかに置き忘れたりすると悪用される危険性があります。現にLINEでオンライン診療を展開されている医療機関は、運用ルールをしっかり決めてそういったリスクを避けていることと思いますが、病院の規模が大きいとヒューマンエラーを避けきれませんので、システム面でのガードも不可欠です。
診察には非常にデリケートな個人情報を含みますから、この点で安心して使えるかどうかが一番の課題でしょう。
実は私の病院でも、医師から「オンライン診療やるならLINEが良いんじゃないか」と言われたことがあります。誰しも新しいことを覚えるのは億劫で、慣れ親しんだものを使い続けたくなるものです。
さらに今回のコロナ禍で、田舎の病院たりとて感染防止の観点からオンライン化の検討を余儀なくされたうえ、新卒採用においてもオンラインで対応するシーンが出てきました。当院でもIT化に前のめりになってきていると肌で感じます。
LINEが本格参入するインパクトは大きいですから、病院内SEとして動向を注視していきたいですね。
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