本記事は後編です。
前編をお読みになっていない方は下記記事をご覧ください。
ヘルプデスクの仕事
- 電子カルテの操作方法指導
- 職員からの電話や問い合わせの対応
- パソコン全般における相談役
電子カルテの導入・更改時のほか、新入職員の採用時などにも操作方法を指導します。細かい運用ルールまで把握する必要はありませんが、現場の運用をひと通り覚えておき、大抵の質問に切り返せるようにしておく必要があります。
指導を受ける側としては当然ながら「電子カルテが自分の仕事にどう関係するか」という視点で考えますので、看護師なら「看護計画を立てるにはどうしたらよいですか」「指示受けはどこからできますか」というふうに質問されます。現場の仕事内容がまるで分からないと質問の意味さえ分かりませんね。
職員から電話や来訪などで問い合わせを受けたら、現場に向かい障害を切り分けます。自力で直せる場合はその場で復旧させ、そうでない場合はベンダーに連絡し修理を手配します。
請求書を印刷するプリンタや検査ラベル用プリンタなどは待ったが効きませんので、病院内SEの腕の見せ所です。機械系のトラブルはベンダーの保守作業の範疇ですが、それまでは応急処置をしたり予備機と交換したりしてその場を凌ぐことになります。
予備機と交換すると一口に言っても単にケーブルを繋ぎ直すだけではなく、IPアドレスの設定や帳票の余白設定など細かい部分のセッティングも必要になるので、短い時間でサッと対処できるかどうかが問われてきます。
ソフト・ハード全般に対応するとはいえ、高度な専門知識は必ずしも必要ではありません。それよりも「業務を中断させないための体制作り」を日頃から整え、院内外の関係部署とスピーディーに連携し必要な措置を取っていくことが求められます。
パソコンの動作が鈍くなったという相談を受け、蓋を開けてCPUクーラーを掃除したり、メモリを増設したりといった作業もします。起動しなくなったパソコンのHDDからデータを取り出すこともあります。
SEということで、パソコンのことなら何でも相談されがちです。「システムから吐き出したCSVを加工してこんな帳票を作ってほしい」「待合室でビデオを放映したいから動画編集してほしい」といった毛色の違う仕事が舞い込むこともあります。動画編集など過去の仕事でしたことはなかったのですが、趣味でやっていたことがあり引き受けました。編集ソフトや機材を調達し、取材や素材収集を行い、収録から編集まで自分でやったのですが、やってみると意外と楽しかったですね。
膨大なデータを集計・資料化する効率の良い方法を相談され、VBAでマクロを組んだこともあります。担当者と打ち合わせして要件定義(とは言っても簡単なものですが)をし、プログラミングからリリースまで一人でカバーします。SEにとっては腕の見せ所でしょう。
「テレビ会議システムを入れたいから候補を見繕ってほしい」「ホームページを今風なものに刷新したい」などなど、他にも依頼は多彩です。パソコン自体が好きで仕方ない人にとっては半分趣味のような仕事もあり面白いのですが、そうでなければ「なぜ自分がこんな仕事をしなくちゃいけないんだ」と思うかもしれません。バリエーション豊富な業務と言えます。
スマホを持ってきて「LINEの設定をしてくれないか」なんていう依頼も来たことがありますが、ここまで来ると通常業務の範疇を超えていますのでお断りしています。便利屋ではありませんので・・・。
書類作成
- 院内で運用する書式の作成
- システム運用管理規定などの整備
病院では電子カルテに様々な書類を登録します。入院患者に治療計画を説明する入院診療計画書、他院へ患者を紹介する際の診療情報提供書、人工呼吸器の酸素流入量を記録する帳簿、などなど多岐に渡ります。これらの書式を作成・修正・削除し、常に最新の状態に保ちます。
便宜上使う書類のほか、雛形が決まっているものもあります。例えば上記に挙げた「入院診療計画書」は、診療報酬制度により盛り込むことが義務付けられた項目があり、雛形が用意されていますのでこれに沿うよう定期的に見直しが必要になります。たかが書式の作成と思うかもしれませんが、病院の規模次第では100種に上ることもありますので侮れません。
またシステム管理者として、運用管理規定を整備しなければなりません。電子カルテにアクセスできる職種の権限範囲、システム使用上の注意、運用ルールの取り決め、などなどを書面に残します。規定は変わるものなので、都度見直して修正していきます。
システムを更改すれば当然運用ルールが変わりますし、個人情報保護法など関係法令が変わることで影響を受けることもあります。電子カルテを導入する病院に対し厚労省が策定したガイドラインも参考にしつつ、病院なりの規定を整備することになります。
以上、前後編に分けて病院内SEの仕事内容についてご紹介しました。
次回は資格編として、民間資格である医療情報技師について触れていきます。
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