今の仕事に満足できていますか?
楽天やライブドアなど新興企業が次々登場し、かつて一世を風靡したIT業界も今や日本では成熟した産業となりました。システムエンジニアも飽和状態となり、広義では様々な業務が生まれ就職のミスマッチも起きています。
システム開発に携るはずがプログラムに触れることもなく要件定義書の作成や顧客との調整に追われたり、社会貢献するWebサービスを作るはずが仕様書や無理な要求に従うだけの「IT土方」と甘んじてしまったり・・・就職時の希望とかけ離れた業務に従事している方も少なくないと思います。
私もそんな一人でした。新卒で入社した会社での業務は、思い描いた仕事とはかけ離れており「こんなはずじゃなかった」と思いながらも、日々の業務をこなすことで精一杯。深夜残業の毎日ではまともに振り返る余裕がなく、愚痴を言いつつも「これが現実なんだろうし仕方ない」と考えていました。
企業研究不足と言われればそれまでですが、実際働いてみないと実情はわからないものです。しかし理想と違ったからと言って働いては辞めての繰り返しでは何も身に着きません。就きたい仕事のことを知りたいときは、実際に働いている人の話を聞くのが一番です。
そこで前置きが長くなりましたが、本記事では医療情報技師の資格を持ち病院のシステムエンジニア(以下、病院内SE)として働く私が、病院という異業種への就職を考えているSEにとって転職する際の参考情報を書いていきます。
▼「異業種への転職」シリーズのまとめ記事はこちら!
病院内SEの仕事
病院内SEの仕事は一言でまとめると、「院内の情報システムを安定稼働させること」です。情報システムとは、電子カルテ、各部門におけるシステム、それらに付帯する周辺機器、インターネット環境など多岐に渡ります。分類すると下記のようになります。
運用・保守の仕事
- 電子カルテの導入、更改
- サーバの点検、パソコン・プリンタ・バーコードリーダー等情報機器のメンテナンス・修理手配
- システムトラブル(ソフト、ハードとも)時の復旧作業
電子カルテを導入したり公開したりする際、院内でプロジェクトチームを立ち上げ、ベンダーと打ち合わせを重ねて運用ルールを決めていきます。病院内SEは現場とベンダー間の橋渡し役として、双方の意見を擦り合わせて取りまとめていきます。ここで生きてくるのが医療情報技師の資格です(資格については今度別記事に起こします)。
医療情報技師を持っていると医療情報システム特有の知識が得られますので、現場の意見が理解しやすいのです。例えば「処方監査」「3点認証」といった言葉の意味が理解できなければ、まともに要望を受けることができず話になりません。医療現場の観点から物事を見たとき、SE側の意見が机上の空論になることもしばしばで、的外れな回答をしていると「現場を分かってない!」と叱られることになります。
医療情報技師の資格は病院に転職してから取得しても問題ありません(現に私もそうでした)。むしろ病院職員として働き始めてからの方が、実務を経て覚えることができ理解が早いと思います。病院に採用されるからには、SEと言えども医療分野の勉強は避けられないということだけ覚えておきましょう。
サーバの点検では、異常を知らせるインジケータが表示されていないか、異常音が発生していないか等をチェックします。部品は経年劣化しますので、HDDやUPSがエラーの場合は交換の手配をします。
パソコン、プリンタ、バーコードリーダー等情報機器のメンテナンスについては説明不要ですね。メモリ交換や内部清掃などにより自前で治せる場合は治しますが、そうでない場合はメーカーに修理を手配します。
「ジュースをこぼした」「キートップの爪が壊れた」「異常音がする」といった小さなものから、「ディスプレイが映らない」「プリンタから印刷されない」といったものまでオールラウンドに対応していきます。ここはSE出身であれば教わらずとも出来ますね。
一番大変なのがシステムトラブルへの対応です。わかりやすい例では、2018年9月に起きた北海道胆振東部地震の際のブラックアウトですね。夜中にシステムが軒並みダウンしたため早朝に病院へ急行し、復旧作業に当たりました。非常電源でいつまで持つのか、シャットダウンさせるならタイミングはいつか、医療機器への供給電力との兼ね合いはどうか・・・など状況を見ながら判断していきます。
ベンダーとも連携しながら終日対応にあたり、翌日には通常の診療を開始できたことには達成感がありましたね。周辺の他院ではシステムが復旧せず数日診療を再開できなかったところもあったため、病院内SEとしての評価が上がった瞬間でもありました。
エンジニアの方には釈迦に説法ですが、障害時のダウンタイムをいかに短くできるかは平時の備えにかかっています。予備電源の備え、UPSの健康チェック、障害対応マニュアルの策定、システムの理解度などSEとしての総力が問われます。こうした日頃の備えを欠かさず行うことも業務の一つです。
>後編へ続きます。
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